長文なので前半だけでも

テーマは「門」だときいて、いくつかのことばが思い浮かびました。「狭き門より入れ」、「門前の小僧習わぬ経を読む」、「登竜門」、「前門の虎、後門の狼」、「忍の一字は衆妙の門」、「門外不出」、「門出」などなど。まじめに高校までの国語の授業を受けていてよかった。これらにあくまでも個人的に、宣伝美術的な解釈を施してみました。解釈違いをしているかも知れないけれど。

・「狭き門より入れ」
インフォメ(公演の文字情報)とどうせそのうち汚れる背景なら、インフォメにこだわれ
※インフォメの鬼と化してもなお、修正の手は休まらぬ。
・「門前の小僧習わぬ経を読む」
 舞台がやっているのを見ていたから、看板に脚を付けたり、ベニヤ板をカッターで切ったりするくらいなら出来る
 ※舞台さんいつもありがとう。
・「登竜門」
 2年生の夏公演で大看板プランナー
※これは正直あまりいい例が思い浮かばなかった。
・「前門の虎、後門の狼」
 大看板ができあがってもまだコタテ(道案内看板)とヒサシ(ホール入口用看板)の塗りが待ち受けている
 ※自分の担当のものだけ作れば終わりというわけではない。
・「忍の一字は衆妙の門」
 つらくてもがんばって塗ってりゃ、ゆーていつかは完成する
 ※たとえ火(日差し)の中、水(雨)の中。くじけることなかれ。
・「門外不出」
 本当は他劇団の人がいる叩き場で塗りの進捗の愚痴を言ってはだめなのかもしれない…
 ※愚痴を聞いてくれた各方面に感謝と謝罪の気持ち。
・「門出」
 引退後、プロデュースでも宣伝美術。
※私の場合、現在予定なし。たぶんこの先も、なし。

もう引退するというのにふざけてばかりもいられないので少しまじめなことも書きます。ここまで読んでくださった方ならおわかりいただけたと思いますが、私は基本看板しか作ってきませんでした。自分のデザインはもちろん他の人のデザインでも、なんだか知らないが気づけば塗ってばかり。公演の仮チラシは作ったことがありますが、当日パンフレットや本チラシなどは作ったことがありません。ひどいときにはそれらの大変さが微塵もわからずに、「デザイン作るだけ作って、印刷して実際に形にしてこの世に生みだすのは業者に丸投げじゃねえか」と内心毒づいたこともありました。腱鞘炎と紫外線アレルギーに苦しめば、もうすべての画材を焼却してしまいたい衝動に駆られたほど。まあ絶対にしませんが。大好きないろんなものを、一瞬、大嫌いになる感覚。皮肉にも、そういうどす黒い感情を心中に湛えたときほど上手く塗れてしまうものでした。ちょろいもんだからそれでほめられてやる気を取り戻す。きれいな見た目をしていても、そこに込められたものによって気味悪さがにじみ出すことはあるようです。内に秘めたあらゆる負のエネルギーを原動力にしがちな性質であるためか、私の作品はとりあえずまあまあきれいだとも言われるし、何とは言えないがどこかがきもちがわるいとも言われます。今回私は大看板を担当しましたが、なんと言われるのでしょう。しかし正直それらは些末なことです。宣伝物それぞれが宣伝効果に功を奏してくれること、受け取った人や目に留めてくれた人に劇の雰囲気を感じとってもらえることを何よりも望んでいます。個人の技量は正直もうどうでもよくて、結果として全体の利になればいい、引退を目前にしてやっとそう思うようになりました。私も入舎当時より少しは成長できたのでしょうか。くぐってきた門はさほど遠くに見えないのに、敲くべきそれは遥か。

17渥美

追記:今回の大看板のデザインには、17が今までに関わった公演それぞれの面影をもたせました。時間のあるときに探してみていただけたらと思います。本公演が終わったらどこかでタネあかしをするつもり。



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