いつか、どこか遠くへ

こんにちは。Webチーフです。

今年も夏公演の季節がやってまいりました。

 

毎公演続けております作業場日誌、2023年夏公演のテーマは「旅」です。

 

ありがたいことに、アクティブで子どもにいろんな体験をさせてやりたいという親元に生まれて20年弱を過ごしてきたので、幼少のころから北海道から沖縄まで様々なところに遠出をさせてもらってきました。両親の実家も居住地からは遠く、旅行と呼べるかはおいておいて毎年必ず数回の遠出を経験する家庭でしたので、遠出へのあこがれもないまま育ちました。

 

大学に入ると、友人と予定を立てて遠出をしたり、一人で外国に遊びに行ったりするひとを見かけることが増えてきます。

そうした方々を見ていると、いつのころからか胸に抱いていた考えがふと頭の中によみがえってくるのです。

 

「ひとりで知らない街に行ってみたい」

 

今春、親戚の家を訪ねて普段なら家族とともに行く場所にひとりで行くことになりました。その際ふと思い立って、その地を通っている路面電車に乗ってみようという気になったのです。

幸運なことに行先は終着駅。私は始発駅から電車に乗りました。

先頭車両に座ると、東京にはない和やかな街並みが次々と眼前に現れます。電車は低い屋根が立ち並び、ときどき昔ながらの庇に守られた小売店が見える道を進み、ぽつりぽつりと走っている自転車をのんびりと追い越していきます。

遠くに視線を移すと、私の瞳に美しい大自然が反射します。きらきら艶めく波の上には鳥が飛び、大きな山は木々を揺らしてこちらを見下ろします。快晴という言葉にぴったりな空からやわらかな陽光が落とされます。

その光が、私の目に映る風景をよりいっそう煌めかせるのです。

幾度も訪れたことのある街でしたが路面電車から見るその街はどうやらどこかいつもとは違う様子で、ほんのりと華やいで見えました。

長い旅のはずでしたが、気が付けばいつの間にか終着駅に降り立っていました。

 

終着駅に降り立った時、私は強く、「一人旅をしてみたい」と思ったのです。

何か大きな目的を据えることなく、なにも心配することなく、自分の今日明日だけをかんがえた、自分のためだけの一人旅。

知っている街をほんの少し遠回りして進んだだけでこれほど美しい景色に出会えるのだから、知らない街をあの日のように過ごしたらどんなに素晴らしい景色が待っているだろうと想像してしまうのです。

いつか、どこか遠くへ、あの日のような穏やかな時間をすごしにいけたらと祈りを込めて、筆を置くことといたします。

 

劇工舎プリズム第80回公演『AND NOW』、初公演まであと2週間です。

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