八月、少女像

24の照明員です。初めて作業場日誌を書かせていただきます。 


原風景と言われると難しいのですが、幼少期に祖父母に連れられて行った、東北のとある美術館での光景について書こうと思います。 


当時私の家では、毎年お盆前後の2週間ほどを東北の母親の実家で過ごす習慣がありました。幼い私の退屈を危惧してか、その間祖父母は私を色々なところへ連れて行ってくれたのですが、車で40分ほどのところにある美術館もそのうちの一つでした。いくつかの展示室に郷土の芸術家の作品を集めた小さな美術館でしたが、その中で今もなお強く印象に残っているのが、ブロンズ像の展示室です。 


適切な呼称が分からず展示室と書きましたが、実態は他の展示室同士を繋ぐ通路のようなスペースで、壁際にブロンズの少女像がいくつか並べられているにすぎません。しかし一つ大きな特徴があり、ちょうど少女像が見つめる方向の壁が一面ガラス張りになっていて、外から光が差し込むようになっているのです。八月の強い日差しがガラス越しに乱反射して、立ち並ぶ少女像に神秘的な輝きを与えていたのが印象的で、子供ながらに引き込まれたのを覚えています。幼い頃の私は重度の飽き性だったので美術館などを楽しめるようには思えないのですが、そのときは全く飽きずにいたのも今思うと不思議だったなと思います。 


その後の私は10年ほど芸術と無縁の生活を送っていたのですが、高校生のときに突如として美術館巡りに目覚め、一時期は月に一回上野に赴く生活をしていました。そして大学入学後は思いつきで劇団に入会し、照明セクションで舞台や役者を照らしたり照らさなかったりする仕事をしています。幼少期に見た少女像の輝きがこのどちらか(あるいは両方)に影響を与えたのかはわかりませんが、『原風景』という言葉を頭に浮かべながら考えてみると、少なくともその手のものを楽しむ素地は昔からあったのかなぁとも思えてきます。 


これで私の原風景の話は終わりです。なぜ美術館巡りが好きかという話をここから延々とし続けても良いのですが、あまりにも蛇足すぎたので長考の末割愛させていただきます。 

24の照明員がお送りいたしました。


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