みなさんへ

好きな子にハガキを出したら、貰うだけでは申し訳ないからお返事を書きましょうか?と言われてその場で一気に気持ちがしぼみ、そんなら要らない!と突っぱねたことがあります。貰えるもん貰っときゃよかったかしら。でももし当時に戻ったとしても、やっぱり要らない!って言う気がします。おてがみってそういうことじゃないから。

私の平成女児だった時分はおてがみ文化が隆盛を極めたものでした。当時ご学友から貰ったおてがみはみんな宝物箱にしまってあって、読み返す度すごくうれしい気持ちになります。文章量は三行くらいしかないのですが、「だいすきだよ。」「あそんでくれてありがとう。」「またあそぼうね。」って、一番うれしいことが一番伝わるように書いてあるのが素敵。おてがみにとって大切なのは受け取った相手に気持ちが伝わるかどうかですから、10年も「だいすき」の伝達に成功しているこのおてがみたちはかなりの秀才と言えます。
秀才は言葉以外でもコツコツ愛を伝えてくれます。かわいい封筒を使ったり、折り方を工夫したり、レートの高いシャカシャカシールや大事にしていただろう鉛筆キャップを「かわいいやつあげるね。」って同封したり。そのひとつひとつできゅんとさせてくれる、素晴らしきおてがみたちを私は愛しています。

『樹に触れる』では、私は宣伝美術と衣装小道具に携わっています。求められるままにそれらしいものを用意すればいいや、じゃなくて、この熱が正しく伝わるように趣向を凝らしたい。10年、それ以上にあなたの心に残る劇にしたい。

私たちの作るものが温かさの伝達に成功しますように。劇場を出たとき、1000年前に貰ったおてがみのことを思い出してくださいますように。今、駒場の小さい箱庭に言葉や光や音を詰め込んでいます。

プリ続けてよかった人より

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